ソシラボ風雲録~株式会社RAPiC 取締役・システムエンジニア 高橋そのみさん編~
「ICTとコミュニティが私を支えてきた今後は私が次の誰かを支える」
株式会社RAPiC 取締役・システムエンジニア
一般社団法人Code for SENDAI 理事
OWASP Sendai Chapter リーダー
目下遠距離介護中
「そのみさんって、『お仕事にかける青春』って感じですよね」
ICT※との出会いは、就職の時でした。文系学部だったんですが、適性が高く、男女の差がなく仕事ができるという可能性に引かれて技術職の道に進みました。もともと理数系は得意だったので、自分のフィールドに戻ってきたような感覚はありましたね。仕事のやりがいはありました。男性の同期に負けたくないという思いもありましたし、実際3年くらい経ったら理系出身の同期にも引けを取らない仕事はできるようになっていたと思います。当時同僚に「そのみさんって『お仕事にかける青春』って感じですよね」って言われたほどでした。
※ICTは「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略
もしかしたら、それは長いトンネルだった
当時結婚した相手は転勤の多い人で、私は元の会社から仕事をもらって契約社員という形での仕事をしていました。その後会社都合で契約社員から個人事業主になったんですが、自分としては他社の仕事もできるし、仕事の質も自主的に変えていける、本来やりたかった新規開発に関われるかもしれない、と前向きな転身でした。しかしスタートアップの時ってなかなか一気に収入が安定はしないですよね。様々な仕事を受けるようになり、講師業なども始め、どうしても仕事に割く時間は増えてしまいます。同時に実家の都合で何度も実家の方にも行かなければならなくなり、家を空けることが増えてしまったんですね。
その時に私が感じたのは「いっそ仕事を辞めて、子どもを持つことを考えたらいいのでは?」というプレッシャーでした。夫婦の間の出産・育児・女性のキャリアの方向性に対する考え方の違いが浮き彫りになってしまったのでしょう。当時は、よほど環境が整っていない限り、妻であることとキャリアを持つこととのどちらかしか選択できない時代でした。個人事業主として足元を固める日々でしたが、40歳を目前に夫とは別の道を歩むことになりました。
一つ目の転機〜トンネルを抜けたらそこは
もちろん経済的な不安は大きかったです。でもすでにお客様はいらっしゃいましたし、私にはICTの技術しかない!収入を増やすしかない!とIT技術のコミュニティに飛び込みました。その中でセミナー運営の手伝いをしたり、メーリングリストで関係性を作ったりするうちに、少しずつ仕事につながるようになりました。
そしてちょうどその頃でした。個人事業主として出発した頃に講師業の教え子だった方が自分を探し当ててくれて、「この仕事を頼むならそのみ先生しかいないと思った」と、楽天球場の大型ビジョンのシステム開発を発注してくれたんです。これは技術者としての自分の、仕事上の大きな転機。私自身の一つ目の転機だったと思います。
二つ目の転機が三つ目の転機を連れてきた
その1年後でした。忘れもしない東日本大震災。あの時は誰もが「たった一人では生きられない」と感じたのではないでしょうか。割と信じてもらえないのですが、私それまで人見知りだったんです。でもあの時をきっかけに誰とでも話せるように、誰にでも話しかけられるようになりました。私の人間としての転機、二つの転機になりました。
そんな気持ちが後押ししてか、当時「シェアカフェ」という場で出会ったIT関連の社長やその仲間と立ち上げたのがこのソシラボ。今自分が所属している会社と同時進行のように立ち上げる運びとなりました。法人相手の仕事も一人で回していくのが大変になっていた頃でもあり、逆にその仕事をこなしていることで力量も見てもらえたのでしょうか、現在に至ることとなっています。「仲間が欲しい、一緒にやっていく仲間が」と強く思った結果かもしれません。一人ではなくなる。これも私にとってはとても大きなことでした。三つ目の転機と言ってもいいと思うんです。
これからは育てる私でありたい
30代は事業主として少しずつ歩き始め、40代はキャリアを積み上げてきたと思います。それで自分はこれからどうするの、と自問自答した時、ICTの業界で人を、特に女性を育てたいと強く思ったんです。というのは、ICTの分野はコミュニケーション能力が重要なんです。女性はICTに向いているんですね。それなのにICTの分野に女性はとても少ない。経済的に不安を感じた時期のある自分としては、スキルを持って仕事をして経済的にも強くあれる分野であることも、女性にとって大きなメリットがあると感じているんです。だから私は女性にICTを教える学校を作りたいんです。ただの学校ではなく、コミュニティ機能を持って受講者が支え合い向上し、目的に近づくことができる学校を。
2019年秋から半年、社会起業のプログラムをみっちり勉強しました。2020年2月26日にはこの事業についてのプレゼンテーションを行います(注:取材日2020年1月17日)。ぜひ聴きにいらしてください。
ソシラボと私
手前味噌みたいですが、ソシラボの良さって本当に誰でも受け入れる敷居の低さだと思うんです。意識高いとか低いとか関係なく、誰にでも開かれている場所であることは、開業当初から念頭にありました。場所があるということはすごいことで、私自身も以前「そのみんずバー」という交流イベントを持っていました。会いたい人を招待したり、紹介したい人同士を連れてくる人がいたり、仲間づくりの場にできたと思います。開業した時から「社会実験の場」なんて考えていたのですが、そろそろ時代の方が追いついてきてくれたかな?なんて思うんです。
(取材した日:2020年1月17日)
※1月25日「TOHOKU SOCIAL × TECH コンテスト」で大賞を受賞しました。
悦子’s Eye
抜群の行動力を持っていて、もちろん仕事もできる憧れの存在である高橋そのみさん。改めて今までの歩みを聞かせてもらっちゃいました。そのみさんがソシラボに連れてくるのはいつもすごい人。その秘密はコミュニティにあったのかも・・・これからもよろしくお願いします!
取材・文: 吉田由香さん(ライター/行政書士)
吉田由香さんの「プロフィールライティング代行サービス」
https://writer.yoshidayuka.com/