ソシラボ風雲録~合同会社 Haikara City 明松 真司 さん編~

2019.7.14. Vol.01

「やりたいこと」と「できること 」なら、「できること」をやろう、って思います。そこで成功体験を肌で感じることが大事です。

初回は、もうじき二つ目の会社を立ち上げる合同会社 Haikara City明松真司さん。

一見順風!に見える明松さんの挫折と、それを救ったソシラボの奇跡とは。

需要がないことは何をやってもダメだ

合同会社Haikara Cityで仙台と東京を拠点に、高専に特化した塾とAIや数学についての社会人教育を手がけている明松真司さん。会社立ち上げからは2年。実はそれ以前にはバンド活動で生きていこうと挑戦していた日々があったという。その時は、ステージの企画から売り込み、チラシ製作まで全てセルフでやるしかなかった。「その時の失敗の経験と、あげていったスキルが今に繋がったんですよね。そしてその時、”どうしたらうまくいかないのか”が逆に本当によくわかった。需要がないところで売れようとしたって何をやってもダメなんです。」

今の事業に「需要がある」と確信したのは、生活のためにアルバイトとして行っていた家庭教師時代。高専から東北大学に進学した明松さんに、その経歴から依頼が殺到したのだ、高専のカリキュラムは独特で、今まで進学に関して塾などのサポートなど聞いたことがない、…ということは、それを求めている人などいないと思い込んでいたのだ。しかし塾や家庭教師を求めている生徒はいる。そしてそれに対応できる人材が極端に乏しいことに明松さんは気がついた。たいていの高専卒業者はエンジニアになるからだ。そこにギャップがあり、ビジネスチャンスがあるのだと。

ダメだな、これ

大学院を中退してまで目指したバンドでの挑戦もうまくはいかず、日々を生きるためのアルバイトを続けながらも、このままではいけないと考えた明松さん。「コワーキングスペース」という言葉に惹かれるものを感じてたどり着いたのが”ソシラボ”だった。「寂しがりやの自分には、必ず誰かいてくれるソシラボという場所は癒しでしたね。村上さんと話もできるし。」半年間くらい入り浸り、飲み会に参加したり、イベントに参加しているうちに、ソシラボつながりで出会った人の立ち上げたもう一つのコワーキングスペースに参加するようになる。その場所を受け継ぐ形で、「高専に特化した塾」を開く話がまとまる。「人生の流れが変わったように感じましたね。」

しかし、その流れは一度せき止められる。融資申込みの失敗だった。下りた金額は事業場所を借りるだけで精一杯。ランニングコストまで賄えない。「ダメだな…これ…。」

肩を落とした明松さんの足が向かったのは、ソシラボだった。

「とにかく村上さんに話だけ聞いてもらおう…。」

野望を言ってみろ 〜ソシラボの奇跡~

肩を落とした明松さんの顔色は青く、足取りも最悪だった。村上悦子はただ事でないと感じる。「大丈夫ですよ。ここコワーキングスペースですよ。誰かいます。誰か力を貸してくれる人がいますって。社長さんとかもたくさん来ているんですから、何かヒントでも力ぞえでもあるに違いないですよ。」かける言葉を尽くしていると、不意に声がかかった。

「ちょっと、その話詳しく聞かせてもらえないか。」

あんなの、漫画の中にしかありえませんよね、奇跡ですよね、と、その瞬間を思い出しては村上は言う。

普段は海外に拠点を持ち、たまたま2か月間ソシラボで仕事をしていたシステムエンジニアのO氏だった。

「本当に、何から何まで話を聞いてもらったんです。」

O氏は開塾予定のオフィスに連日足を運んでくれたという。ホワイトボードに向かい「野望を全部言ってみろ。」明松さんは必死に全て話し続けた。それを肯定し続けながらO氏は言った。「やってみろ。困った時にはお金は貸してやっから。」その言葉で明松さんの目の前が開けた。そして、とにかく一つ一つやってみることを決意する。まずは高専のオープンキャンパスでチラシを配る。そのチラシも、O氏と何日も夜通し考え抜いた。「どうやって人目をひくか。問い合わせがくるようなチラシはどんなチラシか。」

バンド時代のチラシ製作スキルもその時役に立った。こういうチラシは1万部撒いて問い合わせが数件というのが普通のことだという。しかし明松さんのチラシは300枚で15件の問い合わせ。「いける。」明松さんのビジネスが滑り出した瞬間だった。

高専の抱えている問題をクリアにしたい

実は明松さんの動機は母校である高専への愛、ではない。「高専教育を知れば知るほど、その問題がはっきり見えてきたんです。」もう既に、内部でなんとかする段階でもないと考えた明松さんは、塾という、民間からできることで取り組む。それが結果的に高専を良くするのではないか、と明松さんは考えている。中学校の進路指導も高専の特殊性に対応しきれていない。だからこそ自分たちの出番だと。「適切な知識の流れを作りたいんですよ。」挫折が生き方の舵を大きく変え、気がついた時には使命感を抱いていた。

将来の展開よりも今現在できる最大限のことをやっていくだけ、と明松さん。しかし今現在できる最大限のこと、は既に具体性を得て動き始めている。「まず、高専入試についての本を自社で出します。これは絶対売れます。そうすると既存の出版社も分野そのものに関心を持って書籍が増えるでしょ。それは情報が増えるということで、世の中の注目度が変わりますよね。」日本全国にある高専の問題を全部一挙になんとかしたいという思いを実現しようとネットにも力を入れる。既に「高専チャンネル」という動画配信は行っているが、ここ1、2年のうちに教育に関するツール、システムをネット上に完成させたいのだそうだ。

ソシラボには、今までほど頻繁でなくても折々に通う。イベントにも顔を出す。もちろんO氏とも今でも交流もある。「以前は本当によく通っていましたよ。来ると仕事もはかどるし、人とも出会える。事業の計画も、ここで人と会って話して一緒に酒を飲んでいるうちに固まったようなものです。ここにはきっかけを持ってくる人がいるんです。ただ、やりたいやりたいと言ってるだけの人と、実際にやる人には、天と地ほどの差があるんですよね。」ズキリ、と胸に刺さる言葉を柔和な笑顔で言葉にした「実際にやる人」明松真司さん。思いが形になる姿を追っていたい。

(取材した日:2019年5月14日)

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村上’s Eye

とにかく、あっという間に大きくなっていった方なんですよね。そしてとっても優しいんです。

「ソシラボの奇跡」の時に私居合わせたんですけど、とても忘れられません。

ここでお仕事していて出会う奇跡にこれからもたくさん居合わせていたいと感じました。

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次回は画家の 白川美紀 さんの登場です。

お楽しみに!

取材・文:吉田由香さん(ライター/行政書士)

吉田由香さんのFacebookページはこちら。→https://www.facebook.com/yuka.yoshida.52035

写真・レイアウト:田中由美(ソシラボスタッフ)