ソシラボ風雲録~白川美紀さん編~

現実にはあることとないことの間って、本来きっぱり別れているんだけれど、考え抜いて時間かけて絵画にすると、そこに非現実の扉が開くんです。

テンペラ画家白川 美紀 さん

東京出身。

15世紀ヨーロッパの古典画法【油彩テンペラ】に 魅せられ、イタリア・フィレンツェと北鎌倉で学ぶ。

銀座・画廊宮坂や百貨店での個展活動など、画家歴は20年余りになる。

制作の傍ら「もっとアートを身近に」とペットのオーダー制作や、絵画教室講師、WS多数開催。

2005年宮城県仙台市へ移住。東京と仙台で活動中。

「この女ガチにつき」

ガチな絵を描き続ける。だからガチ画家。冗談でそう言っていたけれど、意外と本質かもしれない。

だから王道。選んだ絵はテンペラ画。レオナルドダヴィンチやボッティチェリの作画手法として知られている、古典的な絵画手法だ。お金のある人の趣味でしかないような絵画ではなく、ガチンコで本気で真面目に書き続ける。情熱だ。

 続けられない人が多くなるのは、やはり大変だからだ。家庭を持ち子供を持ち、気力と集中力と体力のいる制作に一日中全身全霊はかけられない。だけど描く。「自分はそこまでの才能はないかもしれないってわかってる」そんなことを言いながら、今の時代だからこそ描ける作品を、自分の絵を素敵だと思ってくれる人に届けたいと考えている。それはストーリー。絵画そのものの良さはもちろん、それを書いた自分のストーリーも乗せて、重層的な魅力を持った付加価値をもった作品を作っていきたい。そう思ったらやはり命がけになる。ならないわけにいかない。

テンペラ画はなんと、絵を描くためのキャンバスにあたる板(基底材)から手作りする。いくつもの工程を同時進行させるとはいうものの、一枚描くのに大変に時間がかかる。贅沢だ。だけど母である。家庭人である。朝から晩まで絵画に没頭することはできない。そこに葛藤がある。けれどもその葛藤も受け入れる。受け入れようとする。受け入れながら苦しむ。かつそんな自分も俯瞰して見ている。見ようとしている。全部きっとそのうち、描く。多分欲張りなのだ。贅沢なのだ。その作品が贅沢になるのも当たり前かもしれない。

贅沢なものを届けようとするのは、持ち前のサービス精神がなせる技かもしれない。常に明るく冗談を言う。作品の説明も、裾野を広げようとして行なっているワークショップも、いつでも全力だ。そのサービス精神は、作品のモチーフにも表れていて、好んで描かれる世界は、写実の中に決してありえない想像力のはばたき、透明感のある絵の具の重なりで表現される現実にはありえない微かに不思議な世界。

 現実にはあることとないことの間って、本来きっぱり別れているんだけれど、考え抜いて時間かけて絵画にすると、そこに非現実の扉が開くんです。

絵画の世界は、描けば売れるというわけではない。実力が正当に評価されるかどうかも含め厳しい世界。やめようかと思った折々になぜかまたこの世界に引き戻される。大きな仕事が来る。その納品の途上でまた次の仕事が来る。「絵は絶対続けた方がいい」声をかけてもらう。描き続ける。もしかしたらこれは自己満足で終わってしまうことなのかもしれない……ふっと力が抜けるそんな時に、そうじゃないと思わせてくれた人がたくさんいる。思いがけないことは突然飛び込んできて、何とテレビドラマで作品が使われた(注)。そんな時思う。少しそんな人たちにお返しができたな。応援してくれた人は自分以上に喜んでくれる。

 

「そんな人のためにも、プロフェッショナルでありたいと思います。」

ソシラボに来たのは2016年。PC作業をするために訪れた。人間ソムリエ村上悦子が見逃すはずがない。暖かい会話。あっという間に常連になった。そしてクリエイターも多いこの場所は、沢山のヒントやアドバイスがえられる場所であった。絵を受け入れてくれるはずの人間の心理をたくさん学びとりたい。常々そう考えていたからこそかけがえのない場所になった。

自分の持っているたくさんのピースを組み合わせて表現する。マイナスだと思ってるピースもひっくり返すとプラスになる。自分の不安定さは他のやり方を見つけるチャンスにする。ソシラボという場所は一つのやり方がうまくいかなかった時に、別のルートが必ずあると信じさせてくれる場所だと感じている。

画家であって母であって仕事をする人であって、そんなたくさんの役割が自分の中でズレを引き起こす。クラシックとモダンを掛け合わせると、そこにもかすかなズレが生じて、そこで魅力が増える。王道を行きながら、自分自身のオリジナルを追求する。そこで生まれてくるものはきっと本物だ。丁寧に時間をかけた贅沢な作品は、目に見えない時間を閉じ込めたもの。それが飾られた場所の空気を本物にする。みんなの見ている現実は、実はひとつじゃない。もしかしたらこうだったかもしれない、想像力が作り出す、命の炎が描き込まれた、 そんな絵。ガチの、絵。

 

「化けるに、決まってる」

(取材した日:2019年8月26日)

(注) 2019年9月11日放映 テレビ朝日「刑事7人」にて、作中の重要な小道具として作品が登場した。

オフィシャルサイト:https://www.miki-s.com/

公式ブログ:http://mikishirakawa.blog102.fc2.com/

ワークショップのお知らせなどはこちらで。

作品販売サイト:https://mikishira.thebase.in/2

(現在購入できる作品が一覧できます)

村上’s Eye

才能のある人なんです。

単なる趣味で書いている人と一緒にしてもらっちゃ困る、って私は思ってます。

すごくニコニコ笑ってるけど、命かけて描いてる、ってことみんなに知ってほしい。背景を知ってほしい。この人の素晴らしさを知ってほしい。

いつもそう思ってます。

次回はSEOライターの 鈴木 ゆかこ さんの登場です。お楽しみに!

取材・文:吉田由香さん(ライター/行政書士)

吉田由香さんの「プロフィールライティング代行サービス」https://writer.yoshidayuka.com/

写真・レイアウト:田中由美(ソシラボスタッフ)